3Dスキャナの選び方
はじめに
「3Dスキャナ」で検索すると、何百万もの検索結果が表示されることに驚かされます。3Dスキャナは、物理的な対象物をCAD/CAMやその他の設計ソフトウェア、3Dプリント、デジタル製造技術と互換性のある3Dデジタルモデルに変換するために不可欠なツールとなっています。そのため、現代においては医療、検査、リバースエンジニアリング、教育、文化遺産保護など、多くの産業で広く使用されています。
ニーズに応じた3Dスキャナはどのように選べばよいのでしょうか? 最も安いものがベストなのでしょうか? 最も高価であるものを選択するのが正しいのでしょうか? 3Dスキャナの選択においては、製品仕様を慎重に評価し、異なる機種を比較することをお勧めします。本記事では、ニーズを完全に満たす機種を選択するのに役立ついくつかの重要な項目として、精度、解像度、スキャン速度、スキャンサイズ、光源など関連する項目をハンドヘルドスキャナのEinScanシリーズを例に記載しています。 ニーズに見合った3Dスキャナを見つける旅のお供になることを願っています。
1-1 レーザースキャナか、構造光スキャナか
3Dスキャン方式には、レーザースキャンと構造光スキャンがあります。
レーザースキャナは、レーザーポイント(点)、ビーム(線)、マルチビーム(複数線)を対象物に投影し、センサでレーザー反射を捉えることでスキャンします。一方、構造光スキャナは、スキャン対象物に光パターン投影することでスキャンします。光のパターンは光変調器を使用して生成されます。光パターンは、1台または複数カメラで追跡され、カラーカメラを使用するとカラーキャプチャも可能となります。
レーザースキャナか構造光スキャナか、どちらがより優れているとは言えず、それぞれに長所と短所があります。
3dnatives.com/en/laser-3d-scanner-vs-structured-light-3d-scannerを参考に翻訳作成
レーザースキャナの主な利点は、環境光の影響を受けにくく、光沢や暗い表面のスキャンに適していることです。また、レーザースキャナのほとんどはハンディタイプです。しかし、非常に光沢のある表面や透明な表面に対しては、レーザースキャナを使用することは難しいです。
レーザーではなく光パターンを投影する構造光3Dスキャナは、数秒で大きなサイズを高精度と高解像度でスキャンすることができます。また、光源は人間の視力に害を与えないため、構造光スキャニング技術は人体スキャンにも使用でき、眩しくないのが特長です。構造光スキャナは、三脚に取り付けて静止状態でスキャンすることもでき、ハンドヘルドで対象物の周りを回ってスキャンすることもできます。しかし、環境光の条件が厳しく、反射する表面に敏感です。
1-2 解像度
解像度とはスキャナが捉える点と点がどのくらいの距離かであるかによって定義されています。3Dモデル内の2点間距離は、スキャンする上で最も重要な要素の1つです。解像度が高い場合に点間距離は小さくなり、細部まで捉えることができるからです。逆に解像度が低くする場合は、大きい点間距離となるため、大きなオブジェクトをより速くスキャンすることができます。この部分はトレードオフの関係となります。Shining3Dのハンドヘルドスキャナは、対象物の大きさに応じて解像度を変えることができます。
1-3 精度
精度は、3Dモデルと実物を比較した際の信憑性に関する情報のことを意味します。スキャナ精度は、品質検査、リバースエンジニアリング設計、医療、その他厳密な精度が要求される用途に適しているかどうかを判断する上で非常に重要です。通常、スキャナ精度が高ければ高いほど、より多くの用途に使用できる一方、もちろんコストも高くなります。そのため、精度を検討する際には、何をスキャンしたいのか、高精度が絶対に必要なのかを考える必要があります。本当に高い精度が必要ですか?
スキャナ仕様で表記される精度は、通常1回のスキャン精度を指します。体積精度は3Dデータ精度と対象物の大きさの関係を意味し、例えば、Shining3D EinScan Proの精度は0.3mm/mになります。これは、マーカーアライメント下(マーカーシールをランダムに貼りつけてスキャンする方法)でスキャンすることで得られます。より高精度の例として、EinScan HX レーザーモードの体積精度で0.06mm/m、検査測定レベルのスキャンができるFreeScan Comboシリーズで0.02+0.033mm/mなどがあります。
1-4 スキャン速度
スキャン速度とは、対象物をスキャンするのにかかる時間を定義しています。スキャン速度は、1秒間に収集されるポイント数、1秒間に収集されるフレーム数、1回のスキャンにかかる秒数で表すことができます。1秒間に収集されるポイント数やフレーム数が多ければ多いほど、スキャン速度は速いということになります。人は長時間じっとしていられないので、人体や止めることのできないものをスキャンする場合には特に重要です。また、車や建物などの大きな物体をスキャンする場合には作業効率にも関係してきます。
2-1 スキャナの仕様例(EinScanシリーズ)
これまで見てきたように、各々プロジェクトに必要な解像度、精度、スキャン速度を考慮し、適切な決断を下すのがよいのですが、実際の仕様やスキャンデータはどのようになっているのでしょうか。Shining3D EinScanシリーズで各仕様を比較します。
EinScan | EinScan Pro HD | EinScan H2 | EinScan HX |
---|---|---|---|
精度 | ★★★★★ 0.045mmまで (ハンドヘルド) 0.04mmまで (固定) | ★★★★ 0.05mmまで | ★★★★★ 0.04mmまで |
多用途性 | ★★★★★ | ★★★ | ★★★★ |
解像度 | ★★★★★ 0.2-3mm (ハンドヘルド) 0.24mm (固定) | ★★★☆ 0.2-3mm | ★★★★★ 0.05-3mm |
スキャン速度 | ★★★★★ 10 FPS 300,000 ポイント/秒 (HDスキャン) 30 FPS 1,500,000 ポイント/秒 (ラピッドスキャン) | ★★★★★ 20 FPS 1,200,000 ポイント/秒 (LED) 20 FPS 1,060,000 ポイント/秒 (赤外線) | ★★★★★ 20 FPS 1,200,000 ポイント/秒(ラピッドスキャン) 55 FPS 480,000 ポイント/秒(レーザースキャン) |
暗部/光沢表面 | ★★★★ | ★★★★ | ★★★★★ |
安定的な スキャンサイズ | 3 - 300cm | 30 - 300cm | 30 - 300cm |
固定スキャン | インドストリアルパック(オプション)適用で可能 | 不可 | 不可 |
カラーテクスチャ | カラーパック(オプション)適用で可能 | 可 | 可(Rapid scan) 不可(Laser scan) |
光源 | LED | LED、赤外線 | LED、レーザー |
オプション | インダストリアルパック カラーパック | なし | なし |
2-2 精度比較(EinScanシリーズ)
大雑把に言って、EinScanシリーズの精度にはあまり違いはありません。EinScan Pro HDの精度は、ハンドヘルドHDモードで0.045mm、EinScan H2で0.05mm、EinScan HX レーザーモードで0.04mmです。したがって、EinScanシリーズの中から適切な装置を選択する上で、精度はそれほど重要なパラメータではないかもしれません。高精度が最優先事項であれば、EinScan HXはEinScanスキャナーの中で最良の選択です。(もっと精度が必要であれば、FreeScan Comboシリーズをお勧めします)
実際のスキャンデータを比較してみてください。下の画像は、EinScan Pro HD ハンドヘルドHDモード、EinScan H、EinScan HX 標準モードでスキャンしたデータです。
EinScan Pro HDでのHDスキャンモード
(解像度0.2mm)
一部を拡大
EinScan Hでの標準スキャン
(解像度0.25mm)
一部を拡大
EinScan HXでのレーザースキャン
(解像度0.2mm)
一部を拡大
実物(一部を拡大)
全体画像ではほとんど差は分かりませんが、一部を拡大した画像では違いが分かるかと思います。
次の画像は、EinScan Pro HD を手で持つハンドヘルドモードではなく、固定スキャンモードでスキャンしたデータ画像です。
EinScan Pro HDでの固定スキャンモード
(解像度0.24mm)
一部を拡大
2-3 スキャン速度比較(EinScanシリーズ)
EinScan Proシリーズは、ハンディHDスキャンで1秒間に3,000,000ポイント、ハンディ高速スキャンモードで1,500,000ポイントをスキャンします。EinScan H2(LEDスキャンと赤外線スキャン)とEinScan HX(ラピッドスキャン)のスキャン速度は1,200,000ポイントと同じで、1秒間に取り込むポイント数とスキャン範囲はProシリーズよりも高速です。しかし、EinScan H2の赤外線モードでは、最大スキャン範囲は780 x 900mmとなります。
機種 | EinScan Pro HD | EinScan H2 | EinScan HX |
---|---|---|---|
光源 | LED | LED、赤外線 | LED、レーザー |
シングルスキャン範囲 | 209x160mm - 310x240mm | 420x440mm(LED) 780x900mm(赤外線) | 420x440mm(rapid scan) |
スキャン速度 | 3,000,000ポイント/秒 | 1,200,000ポイント/秒 | 1,200,000ポイント/秒 |
3 活用用途と推奨(EinScanシリーズ)
EinScan Pro HD
EinScan Pro HDは、ハンドヘルドスキャンによる高解像度と高精度スキャンにおいて、比類ないパフォーマンスを提供します。卓越した多用途性と最適化が一体となり、究極の高能率とプロクラスの3Dスキャンを実現します。
金属パーツ
複雑な彫刻/美術品
自動車インテリアデザイン
新構造の光源を採用することにより、従来固定スキャンモードで使用されていたストライプパターンのスキャニングをハンドヘルドHDスキャンモードに活用しました。0.2mmの最小点距離設定と最適化されたアルゴリズムにより、ハンドヘルドスキャンでも固定スキャンと同等の高解像度と高精度を実現し、複雑な彫刻や美術品を細部までスキャンするのに適しています。
新しい照明投影ハードウェアとソフトウェアにより、EinScan Pro HDは、暗い色や黒い色、金属表面の対象物をより広範囲にスキャンすることができるため、自動車の内装設計や金属部品のスキャンに適しています。
EinScan H2
光を感じさせない高速スキャンで髪を含む、より完全なデータをスキャンします。LEDモードと赤外線モードにより、スキャンプロセスを容易にします。赤外線モードでは、スキャンプロセスにおける目の不快感を軽減し、同時に毛髪の取得を実現、完全なポートレートデータを取得します。
身体をスキャンする場合、ボディモードの新しい非剛性アルゴリズムは、わずかな動きでのデータ取得を容易にします。
デジタルメディカル分析
義肢義足
カスタマイズデザイン
EinScan HX
レーザー光を採用することで、EinScan HXは暗い色や黒い色の表面、金属表面も少ない制約でスキャンすることができます。スキャン範囲が広いため、大きな対象物を高速でスキャンすることができ、自動車のカスタマイズやリバースエンジニアリングのための大きな金属部品などの用途に適しています。LEDライトパターンにより、事前に基準点を準備することなく高速スキャンが可能です。レーザースキャンは、優れた精度と高解像度を可能とします。
2つの異なるタイプの光を1つのデバイスに融合させることで、さまざまな素材スキャンが容易になり、多くの産業分野への幅広い応用が可能になります。
自動車スキャンと修正
リバースエンジニアリング